
2026.6.7
看護師

「今すぐ辞めたいわけではないけれど、このまま今の職場で働き続けていいのかな?」
新人看護師として働くなかで、そのように感じることは珍しくありません。大きな不満がなくても、日々の業務の疲れや、些細な人間関係のストレスが積み重なると、ふと働き方に迷いが出ることがあります。
ただし、辞めたい気持ちが少しでもあるからといって、すぐに退職する必要はありません。大切なのは、ストレスの原因を整理し、今の職場で続ける選択肢と、別の環境を考える選択肢の両方を冷静に見極めることです。
ここでは、新人看護師が辞めたいと感じる理由を中心に、仕事を続けるかを判断するためのチェックポイント、退職を考える前に試せる職場内での立ち回り方について解説します。
もし今、「転職するほどではないけれど、今の働き方が自分に合っているのか整理したい」と感じているなら、第三者と一度話してみるのも一つの方法です。私たちクジラボでは、今の職場で感じている違和感やストレスを一緒に言語化し、納得できる選択肢を一緒に考えていきます。
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今の働き方に迷いが生じたとき、まずは何がストレスになっているのかを客観的に把握することが大切です。
新人看護師が辞めたいと感じる背景には、個人の資質の問題ではなく、構造的に負荷がかかりやすい環境要因が深く関わっています。具体的には、以下の5つの理由が挙げられます。
業務量が多く、こなすのに精一杯になるから
職場の雰囲気や人間関係にストレスを感じるから
夜勤開始による自律神経の乱れと体調不良があるから
看護師になった理由が曖昧なまま働き始めたから
理想としていた看護と現場のギャップを感じるから
それぞれの理由について、詳しく解説します。
看護師の仕事は多岐にわたります。新人看護師のうちは、一つひとつの業務に慣れていないため、目の前の仕事をこなすだけで精一杯になってしまうでしょう。
周囲の先輩が当たり前のように仕事を進めている姿を見ると、「自分だけできていない」「職場に迷惑をかけてしまっている」と焦りを感じるかもしれません。
また、日々の業務量の多さから残業が続いたり、帰宅後も仕事の反省に追われたりすることで休まる時間がなく、疲弊感が慢性化しやすくなります。
職場全体の雰囲気や人間関係にストレスを感じる人も少なくありません。周囲が常にピリピリしていたり、悪口や愚痴が飛び交っていたりすると、出勤するだけで気持ちが重くなるでしょう。
指導が厳しい先輩や、新人の成長スピードに対してイライラを見せる人がいる環境では、些細なミスでも必要以上に落ち込んでしまうことがあります。
特に夜勤中や夜勤明けなど、心身の余裕が少ないタイミングでは、同じ言葉でもより強いストレスに感じやすくなります。
日勤と夜勤を繰り返す不規則な生活は、ホルモンバランスや自律神経に直接影響を与えます。特に、日中に太陽光を浴びて活動し、夜に休息するという人間本来のメカニズムが崩れると、体温調節や消化機能が正常に働かなくなります。
その結果、以下のような身体の異変として現れることが多いです。
睡眠の質の低下
消化器系の不調
慢性的な疲労感
このような身体の変化は、メンタル不調の引き金になりやすいとされています。特に入職後半年前後は、夜勤が本格的に始まるタイミングと重なりやすく、体調の変化を感じる人が増える時期です。身体が発するサインを見逃さないようにしましょう。
新人看護師のなかには、看護師になった理由がはっきりしないまま働き始め、現場に出てから迷いが大きくなる人もいます。
「人を助ける仕事がしたい」「安定して働けると思った」など、進路を選んだ当時は漠然とした理由だったかもしれません。
実際の業務を経験してみると「自分は本当に看護師を続けたいのだろうか」と感じることもあるでしょう。違和感を抱いたのであれば、自分がどのような働き方や環境を望んでいるかを整理することをおすすめします。
理想と現実のギャップに悩んでしまう新人看護師は少なくありません。「患者さんに寄り添う看護がしたい」と思っていても、ルーティン業務と記録に追われる日々に疲れ果ててしまいます。
特に看護職に対して純粋な憧れや強い使命感を抱いていた人ほど、理想と現実の乖離を「自分自身の力不足」や「職場の不備」として深刻に捉えてしまいがちです。
このように、思い描いていた看護の形が崩れていく過程で、仕事に対する情熱や目標を見失ってしまうケースは少なくありません。

日本看護協会が2024年に実施した「病院看護実態調査報告書」によると、正規雇用看護職員における新卒採用者の離職率は8.8%となっており、約11人に1人が採用年度末までに退職していることがわかります。
また、2023年度に採用した新卒採用看護師のうち、年度末までに退職した者が1名以上いる病院を対象に、看護管理者が考える主な退職理由を尋ねたところ、「健康上の理由(精神的疾患)」が52.5%で最も多い結果でした。
つまり、新卒看護師の退職理由として、精神的な健康問題が背景にあるケースが半数以上にのぼると現場の管理者は捉えているということです。辞めたい気持ちは、決してあなただけが感じている特別なことではありません。
本調査は、全国の病院8,079施設を対象に実施され、有効回収数は3,417施設にのぼることから、全国規模で実施された大規模調査であることがわかります。
参考:日本看護協会|2024 年 病院看護実態調査 報告書

一定数の新人看護師が退職を選ぶ一方で、「辞めたい」ような強い思いを抱えながらも踏み切れず、働き続けている人も少なくありません。背景には、新人特有の葛藤や不安が隠されています。二の足を踏んでしまう主な理由は、以下のとおりです。
やり切っていないという未練があるから
短期離職したと見られたくないから
看護師以外に何ができるかわからないから
一度臨床の現場から離れたら戻れないと感じるから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
新人看護師が辞めることを踏み切れない理由の一つに、「まだやり切っていない」といった未練があることが挙げられます。少しずつできる業務が増えてきているからこそ、「ここで辞めたら中途半端になる」と感じる人も多いでしょう。
特に新人のうちは、周囲と比べてできないことに目が向きやすく、「まだできていない自分」が退職や転職を考えるときのブレーキになります。
しかし、やり切ることの基準は人それぞれです。一定のラインまで続けることよりも、今の自分の状態が持続可能かどうかを軸に、判断する方法もあります。
短期離職したと見られたくないとの思いから、今の職場で働き続けている人も少なくありません。「すぐに辞めたと思われて次の職場で不利になるのではないか」と外向きの不安も、踏み出せない要因の一つです。
「最低でも2〜3年は続けた方がよい」といった考えが根強く、今の職場に違和感があっても我慢して働き続けることを選んでしまうケースがあります。
しかし、実際の転職市場では、次の職場での意欲や適性が重視されるケースも多いです。短期離職の事実だけで評価が決まるわけではありません。辞めた理由や次の職場で大切にしたいことを整理して伝えられれば、過度に不安視しすぎる必要はないでしょう。
「ほかにどんな働き方があるのか」「自分の経験で応募できる仕事はあるのか」がわからないと、転職を現実的に考えにくくなります。求人を眺めても、仕事内容や働くイメージがつかめなければ、自分に合っているかを判断するのは難しいでしょう。
結果、気持ちは動いていても、方向性が決まらないまま時間だけが過ぎてしまうことがあります。まずは、今すぐ応募先を決めるのではなく、病院での臨床以外にどのような選択肢があるのかを知るところから始めてみましょう。
臨床の現場から離れると、戻れないのではないかと感じる人も多いです。企業看護師をはじめ、病院以外の働き方に興味があっても、「臨床経験が浅いと、将来戻りたくなったときに選択肢が狭まるのではないか」と考えると、動き出しにくくなります。
特に新人のうちは、経験できる業務や配属先が限られているため、今の部署以外で通用するかどうかといった不安も重なりやすいでしょう。
ただし、看護師免許は何年も働いていないからといって失効するものではありません。一度臨床現場を離れてから、期間が空いて戻ってくる人もいます。戻れないといった前提を疑ってみることで、選択肢が広がるかもしれません。

辞めたい気持ちと、辞められない不安の間で板挟みになると、正常な判断ができなくなることがあります。看護師を辞めるか続けるか、判断に迷っているなら、以下のチェックリストを参考にしてみてください。
身体の不調のサインがあるか
心の不調のサインがあるか
職場環境の限界サインがあるか
複数当てはまる場合は、専門家への相談も選択肢の一つとして考えましょう。それぞれの内容を詳しく見ていきます。
まずは身体に不調が出ていないか確認しましょう。具体的なサインは次のとおりです。
動悸(心臓がドキドキする感覚)
不眠
食欲不振
原因不明の微熱
これらは、身体が強いストレス下にあることを示すサインです。頭で「頑張らなきゃ」と思っていても、身体が拒否反応を示しているなら、まず休息を取ることが先決です。
身体の不調は、精神的な限界が近いことを教えてくれる初期のサインといえます。体調の変化をサインとして受け止め、一度立ち止まることも選択肢の一つです。まずは、自分の身体が発しているサインを見逃さないようにしましょう。
身体の疲れと同様に注意を払わなければならないのが、心にも不調のサインがあるかどうかです。日々の忙しさに追われていると、精神的な摩耗を「ただの疲れ」として片付けてしまいがちです。
以下のような変化を感じる場合は、働き方を見直すタイミングかもしれません。
感情のコントロールが困難
興味や喜びを感じにくい
物事を判断できない
これらの症状は、適応障害やうつ病の初期サインである可能性もゼロではありません。精神的な限界は、気持ちの持ちようだけで乗り越えられるとはいえないでしょう。
心の不調のサインに気づいたときは、信頼できる人や医療機関に相談してみましょう。一人で抱え込まないことが、回復への第一歩です。
職場環境が限界であるサインの例としては、以下が挙げられます。
パワーハラスメントが常態化している
世間と職場の常識がズレている
教育体制がほとんど機能していない
深刻な人手不足で有給休暇が取れない
上記に該当する状況は、個人の努力だけでは改善が難しいでしょう。「慣れれば変わるかもしれない」と思いながら耐え続けることが、かえって心身の消耗を加速させてしまいます。一つの選択肢として、環境を変えることを検討してもよいでしょう。

看護師を辞める方向で考えているとしても、完全に退職を決断する前に、今の環境のなかで何か変えられないかを探ることも重要です。働き方をはじめ、職場環境を変えることは、自分の中にとって大きな変化だからです。
ここからは、看護師を辞める前に試せる職場内での立ち回り方を3つ解説します。
係の仕事や委員会活動を一時的に免除してもらう、受け持ち患者数を減らしてもらうなど、業務の負荷を軽減できないか師長に相談してみましょう。
自分から言い出すことに抵抗を感じる人もいるかもしれません。しかし、今のしんどい状態を正直に伝えることは、職場や自分を守ることにもつながります。
相談のタイミングは、限界を超えてからではなく、「少しつらくなってきた」と感じ始めた段階で伝えるのが理想です。業務量の調整は、休職や退職を防ぐための取り組みとして、多くの職場で浸透しつつあります。
辞めたい理由が夜勤負担である場合、辞める決断を下す前に、まずは夜勤を物理的に軽減できないか、師長や上司に相談の場を設けてもらいましょう。
日勤と夜勤を繰り返す不規則な生活によって自律神経が乱れ、心身の不調を引き起こしやすいことは、医療現場においても共通認識として定着しています。
スタッフの定着を図る目的で「夜勤なし」の働き方を認める病院も増えています。心身が限界に達する前に、自身の状況を上司に伝えてみてください。
「現在の診療科の業務内容がどうしても自分に合っていない」と感じる場合、組織内での配置転換(異動)が、悩みを解消する大きな転機になる場合があります。
一つの病院内であっても、部署が変われば人間関係が大きく変わるほか、必要とされるスキルや業務のスピード感も異なります。
環境が変わるだけで、これまで感じていたストレスが劇的に緩和され、再び仕事にやりがいを見出せるようになるケースは決して珍しくありません。
看護師を辞める前に、配置転換や異動の申請も一つの選択肢として検討してみましょう。
職場での立ち回り方を工夫しても状況が改善されない場合や、すでに心身の不調を感じている場合は、退職に向けて動き出す必要があります。トラブルを防ぎ、円満に退職の手続きを進めるためのコツは以下の3つです。
前向きな退職理由であることを伝えておく
法的権利があることを理解しておく
退職後にもらえるお金を把握しておく
それぞれ詳しく解説します。
退職の意思を伝えるときは、現状の不満やネガティブな感情をそのままぶつけるのは避けましょう。感情的な言葉は、引き止めやトラブルを招く原因になりかねません。
「新たな領域に挑戦したい」「改めて自分のキャリアを見つめ直したい」など、相手が否定しにくい言葉を選ぶと、円満退職につながりやすくなります。
また、退職の意思を伝える場合は、できるだけ早めに直属の上司に伝えるのが基本です。引き継ぎやシフトの調整に配慮することで、職場との関係を良好なまま退職できるでしょう。
労働者には自分の意思で退職する権利が法律で保障されているため、過剰な引き止めや脅しに怯える必要はありません。
民法第627条では、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の意思を伝えてから2週間が経過すると雇用契約が終了すると定められています。
就業規則に則って手続きを進めることで、多くの場合、円満に退職できます。
ただし、トラブルを避けて円満退職を目指すのであれば、まずは「1か月前まで」のように職場の就業規則の定めに沿って進めるのが一般的です。正しい法的な知識を持っておくことで、退職交渉における不必要な不安や精神的負担を大幅に軽減できるでしょう。
退職後の経済的な不安は、失業給付や傷病手当金といった「公的制度」を活用してお金の見通しを立てることで解消できます。当面の生活費の目処が立てば、気持ちにも余裕を持って次のステップを考えられるでしょう。
雇用保険(失業給付)は、退職日前の2年間に12か月以上の加入期間があれば受給できます。なお、1年未満での退職の場合、加入期間の要件を満たさないことがあるので注意が必要です。
ただし、病気や精神的ストレスなどのやむを得ない理由による退職(特定理由離職者)と認められた場合は、加入期間が6か月以上あれば受給できる可能性があります。在職中の状況や制度を確認しておきましょう。
また、病気やけがで休職した後に退職する場合は、傷病手当金を活用できる可能性があります。「辞めたら生活できなくなる」と一人で抱え込まず、まずは自身の加入状況や利用条件を整理してみましょう。

無事に退職手続きが進めば、次は新しい働き方を考える段階です。早期に辞めたからといって、看護師としての道が完全に閉ざされるわけではありません。
資格やこれまでの経験を活かせる選択肢は豊富にあります。具体的な選択肢は以下のとおりです。
教育体制が整った別の病院へ転職する
クリニック、施設、訪問看護へ転職する
看護師免許を活かせる一般企業へ転職する
看護師を辞めたら終わりではなく、どのようなキャリアがあるかを知ることで、選択の幅が広がります。それぞれの選択肢について詳しく解説します。
第二新卒として、教育制度が充実している病院へ再就職を目指すのも選択肢の一つです。
第二新卒とは、入職後数年以内で離職し、転職活動を行う若手層を指します。今の職場での経験は、決して無駄にはなりません。
たとえ短期間であっても、現場で得た基礎知識やスキル、現場経験を武器にしながら、教育環境やライフスタイルに合う条件を優先して職場を再選定できるのが、大きなメリットです。
再就職を成功させるためには、新人研修やプリセプター制度が整っているかどうかを確認しておくと良いでしょう。プリセプター制度とは、先輩看護師が1対1でサポートする仕組みのことです。
病院という枠組みを超え、クリニック・介護施設・訪問看護ステーションなどへフィールドを移すことも、長期的なキャリアを築くための有力な選択肢です。
クリニックや介護施設などの職場では、高度な急性期医療や命の危機に直結する緊迫した処置よりも、地域に根ざした看護や患者さんの日常生活を支える関わりに重点が置かれます。病院とは異なる看護のやりがいを見出しやすく、より人間味のあるケアを追求したい人に適しているといえるでしょう。
夜勤がなく、精神的なゆとりを持って働ける職場も多くあります。身体的・精神的な負担を減らしながら看護師としてのキャリアを続けたい人におすすめです。
看護師免許を活かせる一般企業へ転職する方法もあります。具体的な転職先として、以下が挙げられます。
治験コーディネーター(CRC:新薬開発の臨床試験を調整する職種)
企業の健康管理室
医療IT・ヘルスケア系の新興企業
看護師免許を持っているからといって、必ずしも看護師として転職する必要はありません。病院以外のフィールドで専門知識を発揮する働き方もあります。
看護師から異業種への転職について、詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:看護師の異業種転職は可能?評価される強みと具体的な進め方を解説

「すぐに辞めたと思われて、次の職場で不利になるのではないか?」といった外向きの不安から、今の職場に違和感があっても我慢を選んでしまう人が少なくありません。
「もっと続けてから」「まだできていないうちは」と感じるのは自然なことであり、その気持ちを否定する必要はありません。
ただし、今の職場や働き方が自分に合っているかどうかを考えることは、看護師を辞めることとは別の話です。今いる環境が自分の特性に合っているかを知っていれば、今後の選択に役立ちます。
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